海外移住を考えたことのある人ならきっと耳にしたことがある、オランダの個人事業主ビザ。
資本金 €4,500 があれば誰でも簡単に申請できる、ということで
私も今年(2023年)7月に入国し、申請手続きを経て2ヶ月後の9月には取得することができました。
私が申請手続きについて調べていたここ数年の間でも、
取得に数ヶ月(ビザなしで滞在できる3ヶ月以上)かかったという方もいるようなのですが、
なんと8月からこの申請プロセスが変わったとのことで、私はかなりスムーズに手続きできました。
しかし、ビザ自体は簡単に取得できたものの、その他の移住手続きにおいては様々なハードルがありました。
実際に体験して、こうした注意点は移住を決める前に知っておきたかったなと思っています。
ここではそんな私の体験談から、最新のオランダ個人事業主ビザの申請方法と流れを、注意点なども含めて紹介します。
日本出国前にやるべきこと
戸籍謄本の発行とアポスティーユ申請
日本を出国する前に、ビザ申請に必要となる書類を日本で発給してもらいますそれは「アポスティーユ付きの戸籍謄本」です。
これは、自治体で発行してもらう戸籍謄本に、外務省から “アポスティーユ” という認証をしてもらうことによって、オランダでの申請時に有効な書類とする手続きです。
依頼はとても簡単で、認証してもらう戸籍謄本と、申請書、返送用レターパックを同封し、窓口宛に郵送するだけです。私の場合、1〜2週間程で返送してもらえました。
詳しくは外務省のウェブサイトをご確認ください。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000608.html
(私は念の為2通申請しておきましたが、実際オランダでの申請において原本の提出を求められることはありませんでした)
英語の残高証明書
ビザ申請時に、資本金である €4,500 以上残高があることを証明するため、銀行で英語の残高証明書を発行してもらう必要があります。
特に日本の銀行では別途申請が必要な場合が多く、オランダ入国後の手配だと時間がかかってしまうこともあるので、出国前に発行し持って行くようにした方がスムーズです。
航空券と一時滞在先の確保
出国予定日が決まったら、航空券と滞在先を予約します。
私の場合は、大韓航空(ソウル経由、片道10万円程)の片道、Airbnbでとりあえず1週間くらいの滞在先を確保しました。
(余談ですが、大韓航空の機内食で選べるコリアンメニューはとても美味しかったです!)
オランダについてすぐは大使館や外務省に行く必要があり、どちらもハーグにあるので滞在先はハーグにすると便利です。
注意事項!
片道の航空券+1週間のみの宿の予約だけの場合、入国審査で止められる可能性があります。
実際、私も窓口で一通り質問された後、脇で2、30分待たされ、更にセキュリティに質問攻めされました。
宿の予約の情報のほか、どんな予定でどこに滞在し、いくらぐらい使う予定か、仕事は何をしていてどのくらい報酬をもらっているかまで聞かれました。
(個人事業主ビザ取得目的でと言ってもよかったのかもしれませんが、それはそれで引っかかりそうだと思ったので私は観光目的で来ていると説明していました)
日本のパスポートだから、とすっかり気を抜いていたのですが、念の為にこうした質問に答えられるようにしておくと良いかと思います。
オランダについてからすぐやること(ビザ申請)
戸籍謄本(アポスティーユ付き)の翻訳依頼
オランダに到着して、まずはビザの申請に必要な戸籍謄本の翻訳を依頼するため、日本大使館へ行きます。
大使館でなくても個人の方に翻訳依頼できたりするようなのですが、誰でもできるということでもないことと、大使館でも€9で対応してくれるとのことだったので、こちらで進めました。
大使館へはハーグの駅からバスで10分程で行けます。
入館手続きを経て、中に入ると申請書が置いてある棚と記入できるスペースがあるので、その場で記入し、窓口にパスポートと翻訳してもらう戸籍謄本の原本と一緒に提出します。
受理されると、受取日を案内されるので(通常は1週間後)、その日にまた取りに行きます。
(翻訳料€9は受け取る時に支払います)
翻訳後の戸籍謄本のリーガライゼーション
大使館へ行き、翻訳された戸籍謄本を受け取ります。
そして今度はこの書類の “リーガライゼーション” をするため、外務省へ行きます。
外務省はハーグの駅のすぐ側にあります。
中に入ると、受付番号を発券する機械があるので、そこでリーガライゼーション用の受付をします。
(英語の表記が見当たらなかったので、私は近くにいたスタッフの方に聞いて発券しました)
番号が呼ばれたら窓口に行き、戸籍謄本を渡します。
その後30分程で、リーガライゼーションした戸籍謄本を受け取ることができます。申請料は€10をその場で支払います。
午後に行くと翌日の受け取りとなることがあるそうなので、午前中に行くことをおすすめします。
ビザ申請
戸籍謄本の準備ができたら、いよいよ移民局(IND)へビザを申請します。
以前はINDの予約を取って対面で申請する必要があったようなのですが、現在は以下の書類を郵送するだけで良いようです。
- ビザ申請書(下記INDウェブサイトからダウンロード)
- リーガライゼーション済み戸籍謄本(コピー)
- パスポート(コピー)
- 英語の残高証明書(コピー)
- ビジネスプラン(コピー)
書いたことのない人でも、いろいろなサイトでテンプレートを提供しているので、そちらを活用すると書きやすいです!私は Canva で作成しました。
詳しくは移民局のウェブサイトをご確認ください。
https://ind.nl/en/residence-permits/work/residence-permit-self-employed-person
特に問題がなければ、後日ビザ発給の旨(いつからいつまで有効か)と、次のステップで必要となる v-number という番号が手紙で送られてきます。
この手紙を受け取った段階で、実質的にビザが発給されたという認識のようですので、ここまでをビザなしで滞在できる90日の間に済ませる必要があります。
この手紙が届いてすぐ、別途生体認証(顔写真・指紋)の記録をするための予約を取るように、また申請料 €350 の支払いをするようにと指示がありました。
生体認証は最寄りのINDのオフィスで、5分くらいで終わる簡単なものでした。
(この顔写真がIDにも使われます)
その手続きが済んだら、その後更に1週間程でまた手紙が届き、IDの用意ができたので受け取りの予約をするようにと連絡があります。
無事受け取ることができたら、ひとまずはビザ申請のプロセス完了です。
最寄りのINDの予約がなかなか取れなかったり、私の場合は旅行を挟んだりしたので、ここまで辿り着くのに2ヶ月かかりましたが、この新しいプロセスのおかげで、以前よりはスムーズに進められたのではないかと思います。
注意事項!
INDから手紙にも記載がありますが、ビザ発給日から6ヶ月以内にこの後紹介するKVKへの事業登録と銀行口座への資金の移行をしなければなりません。
これができていないと、ビザを無効にすることもあるとのことなので、6ヶ月もあると安心せず、早めに完了させておくことをおすすめします。
特に、KVKの登録の前に済ませなければいけない住民登録、そのための家探しに時間がかかることもありますので、注意が必要です。
ビザ申請後にやること
家探し ※超重要※
ビザの申請後、もしくは申請しながらやっておいた方がいいのが、家探しです。
2023年10月現在、オランダの賃貸の市場は完全な売り手市場で、良い物件を探し、契約するのがかなり難しい状況です。
物件掲載サイトなどを毎日チェックし、新規の物件を見つけてすぐ不動産屋さんに問い合わせても、多くの場合は返答がなく、あったとしても、すぐに他の人に先に契約されてしまいます。
家賃も日本とは比べものにならない程高騰しており、アムステルダムだと1bedroomでも €2,000(約31万円)程となっています。
また、特に私のように、①つい最近引っ越してきた外国人、②フリーランス(定期的な収入が保証できない)という立場だと、なかなか大家さんに選んでもらえないこともあります。
人の移動が多いアムステルダムでは短期間のサブレット(又貸し)などもよく見かけますが、長期の賃貸の本契約はなかなかハードルが高いのが現状です。
この家探しが難しい上になぜ重要かというと、移住の手続きの一つである住民登録をする上で、登録可能な住所を指定しなければいけないためです。
(住民登録については後述)
この登録可能かどうかというのは家ごとに決められているらしく、例えば、2人までと決められている家の場合、部屋があったとしても、3人目は登録ができない、ということなのです。
そのため、どこか仮の住所で登録することはできず、住民登録可の条件を満たす物件を探すほかないのです。
こうしたことを踏まえると、住む場所がない、という状況に陥らないためにも、家探しはなるべく早く始めて、こまめに物件などをチェックしておくと良いかと思います。
住民登録
住民登録可の物件を見つけ、無事契約成立したら、すぐに市役所で住民登録をします。
住民登録をすると、日本のマイナンバーのような登録番号(BSN number)が発行され、これが税金の支払いや銀行口座の開設、商工会議所での事業登録などに必要になってきます。
引っ越すごとにごとにアップデートが必要ですが、初回の登録のみ対面で、その後はオンラインで手続きができるそうです。
初回の登録には、まず市役所のウェブサイトから予約をします。
(アムステルダムなどの都市部では予約が取りづらく、大体1ヶ月後になることが多いようです)
アムステルダムのウェブサイトはこちら。
https://www.amsterdam.nl/
予約日にメールで届く予約番号を持って、市役所へ行きます。
受付後に案内される窓口でパスポートとID(まだ受け取っていない場合はINDからの手紙)、戸籍謄本、賃貸契約書を提示します。
すると、その場で担当の人が登録手続きをし、BSN number の記載された書類を発行してくれます。
これで住民登録が完了です。
事業登録
住民登録ができたら、次は商工会議所(KVK)で事業登録です。
これも要事前予約なので、住民登録の目処が立ってからすぐにウェブサイトで予約をしました。
ウェブサイトはこちら。
https://www.kvk.nl/en/
また、予約の際に事業登録の内容を入力するフォームがあるので、画面の指示に従って入力します。
予約日当日は、受付を通って、名前を呼ばれたら窓口へ案内され、その場で事前に入力した内容を確認しながら、手続きを進めます。
手持ちの書類は一通り持って行きましたが、提示を求められたのはパスポートと住民登録書類(BSN numberの確認)だけでした。
登録が終わると、事業登録番号(KvK number)の書いた紙と、登録料金 €65 の請求書(その場でオンライン決済しました)、個人事業主向けの情報が記載されたパンフレットを渡されました。
これで事業登録も完了となります。
銀行口座開設、資本金の入金
住民登録が完了し、BSN number が発行されると、銀行口座の開設ができます。
ING や ABN AMRO などが、現地のトラディショナルな銀行としてよく使われているようですが、私は無料で使える Revolut というオンラインの口座を開設しました。
(Revolut だと BSN number もいりませんでした)
KVKの事業登録後、ビジネス口座も開設しましたが、こちらも Revolut Business にしました。
ビジネス口座を開設したら、資本金をこちらの銀行口座に移しておきます。
どのようにモニターしているかはわからないのですが、INDの手紙にも書かれている通り、完了していない場合はビザを無効にすることもあるそうなので、開設後すぐに送金をしました。
まとめ
以上、オランダの個人事業主ビザ申請・移住手続きをご紹介しました。
完了まで複数のステップを経なければならず、難関もあり、なかなかスムーズにいかないところもあるかもしれませんが、私のように2ヶ月程で完了することも十分可能です。
ぜひ、現在オランダ移住と個人事業主ビザ申請をご検討中の方のご参考になればと思います。