今回、私自身初めて170kmという長距離のハイキング、ツール・ド・モンブラン(TMB)に挑戦しました。
それまで基本的に日帰り登山ばかりで、山小屋にも1泊しかしたことがなかったため、初めは10日間歩き続けられるか、ゴールできるか、自信がありませんでした。
(体験記はこちら↓)
それでも無事に終えることができたのは事前のリサーチと、準備があったからだと思いますが、山で出会った人たちの中には、充分な準備ができていなさそうな人もよく見られました。
TMBはヨーロッパでも特に人気のコースで、技術的に難関なポイントがほとんどないことから、初心者にとっては挑戦しやすいコースといえます。また、現在では複数の旅行代理店がツアーを提供しているので、世界中の人が手軽に参加できるようにもなっています。
そのため、登山経験の少ない人でも挑戦しやすく、だからこそ初心者が犯してしまいがちなミスが目立っていました。
今回は、そんなミスを避けるために私がやってよかったと思う事前準備と、TMBを楽しく完歩するポイントについてご紹介します。
TMBに挑戦してみたいと思っている方はぜひチェックしてください。
出発するまでに必要な事前準備
スケジュールと予約
まず初めに確認しなければいけないのは、いつ行くか、そしてその日程で宿の予約ができるか。
TMBのハイキングシーズンは6月下旬〜9月上旬頃といわれていますが、世界中の人が訪れるコースであるため、山小屋は予約で一杯になります。少なくとも半年前、中には一年前から予約をする人もいるそうです。
また、直接予約をする場合は、10日間の行程を確認しながら泊まる場所を決めてそれぞれの山小屋へ連絡しなければならず、もし空いていなかった場合は行程を調整しなければなりません。
そこで私は bookatrekking という代理店のツアーを利用しました。
ツアーといってもガイドがいるわけではなく、行程表とGPSマップ、山小屋の宿泊(朝食・夕食込み)を手配してくれるプランです。
TMBツアーページ:https://bookatrekking.com/en/trek/tour-du-mont-blanc-10-days/
この代理店では、TMBの西側・東側だけのコースや、12日コースなどのオプションも用意されているので、レベルや日数に合わせてコースを選ぶことができておすすめです。
このツアーも直前にはほとんど予約ができなくなるため、なるべく早く予約しておく必要があります(私は5ヶ月ほど前に予約をしました)。
段階的に支払いができて、ツアーの8週間前であれば無料でキャンセルできるので、とりあえず日程を抑えておくことをおすすめします。
また、テント泊という手段もありますが、場所によってはキャンプが禁止されているエリアもあるため、事前に確認が必要です。
※イタリア Aosta Valleyでは2,500m以下の場所でのキャンプが禁止されています。
引用:https://www.autourdumontblanc.com/en/accomodations/bivouac
トレーニング
TMBを歩いている中で割と多くいたのが、充分なトレーニングをせずに参加している人です。
過去に登山をしたことがあったり、日常的に運動をしている人がほとんどではあったものの、このTMBのルートように1日最長20km程の長距離を歩いたことがなかったり、数日間連続で歩くということに慣れていなかったりと、日々の軽い運動だけでは充分に鍛えることができていないように見えました。
結果、体力が回復せず途中でバスを使うことになったり、ドロップアウトせざるを得ない人もいたので、完歩するためには事前の充分なトレーニングが必要なのだと感じました。
私が事前に調べて行った、おすすめのトレーニングは長距離を定期的に、登山時と近い条件で歩くということです。
距離は、まず10km程度から初めて、徐々に15km、20kmと伸ばしていき、頻度も週1回から2回、できれば3回と増やしました。
私の住んでいるオランダは平坦で山がないため、広い公園などを歩いていました。
そしてこの時特に重要なのが、登山靴を履くことと実際にかかるものと同じ重さの荷物を持って歩くことです。
この2つを行うことで、靴擦れの対策と荷物を背負いながら歩くということの練習になり、実際に山に入ってからのハプニングを避けられます。
次のポイントにもなりますが、実際に荷物を背負って長距離を歩いてみることで、荷物の重さを調整する機会にもなるので、この経験は必須だと思います。
おまけ:山小屋に慣れる
トレーニングと言えるかわかりませんが、山小屋に泊まったことがない人は、ぜひ経験しておくと良いと思いました。山小屋といっても場所によって大きさや設備など様々ですが、山の中で、他人との相部屋で寝泊まりするということに慣れていないと、充分な睡眠が取れなかったり、またそのために必要な準備がわからなかったりするので、一度でも山小屋には泊まっておくべきだと思います。
荷造り
トレーニングの次に初心者が失敗しやすいポイントは、荷造りです。
ここで注意したいのが、必要な装備が整っていないということではなく、不必要なものまで持ち運んでいるため、荷物が重くなってしまっているということです。
例として、私が会ったハイカーの中にはジーンズなど登山道では必要がない洋服、シャンプーや洗剤などを必要量以上に持ち歩いているケースがありました。
食事は山小屋で提供されるので、行動食なども必要な分だけ厳選して、なるべく重量を増やさないよう工夫が必要です。
また、常用薬などがある人は忘れずに日数分持っていかなければなりませんが、特に夏は気温の変化が大きく、また体が疲労して免疫が弱くなっていて感染症などにかかりやすいので、常備薬も持ち歩くと安心です。
(実際、体調を崩している人を後半の5日間は毎日のように見かけました)
10日間歩き続けるためには、なるべく疲労を残さないよう、体調を気遣うことが大切です。
その点で、毎日できるだけ充分な睡眠をとることが望ましいですが、大人数の相部屋ではなかなかぐっすり眠ることが難しいような場面もありました。
そんな時でも、完全に音をシャットダウンできるような耳栓や、必要であれば睡眠改善薬などもあると良いかもしれません。
【持って行ったものリスト】
※8月下旬〜9月上旬の気候に合わせた服装です。
- ハイキングシューズ
- Tシャツ x2
- レギンス x2
- ショートパンツ x1
- 下着 x3
- 靴下 x3
- フリース
- ジャケット
- レインウェア
- 帽子
- 手袋(薄手のもの)
- サンダル(山小屋用)
- バックパック
- トレッキングポール
- ヘッドランプ
- サングラス
- インナーシュラフ
- 速乾タオル x2
- ハイドレーションバッグ
- プロテインバー x12
- シャンプー
- シャワージェル
- 救急セット(テーピング、絆創膏、頭痛薬、胃薬)
- 携帯電話
- モバイルバッテリー
- 充電ケーブル
- パスポート
- 現金とカード
- 日焼け止め
- 耳栓
- ビニール袋(ゴミ用)
TMBが楽しくなるポイント
ここからはTMBをさらに楽しむためにおすすめしたいポイントをご紹介します。
見所・絶景スポットをチェックしておく
TMBのコースは本当にどこからも絶景といえるような景色を眺めることができるので、道中全く辛くありませんでした。
周囲を包む山々や、所々で見られる渓流や湖、山小屋の風景なども、何一つ同じものがなく飽きずに楽しむことができます。
山の中だけでなく、小さな村の古風な建物や教会などの見所もありました。
また、運が良ければアイベックスや、マーモットなどの動物にも出会うことができるかもしれません。
事前にこうした見所や絶景スポットをチェックしておくことで、今日はどんな景色が見れるかな、と考えながら歩くことができて、楽しみが増えます。
暇つぶしになるものを持っていく
行程によって、数時間で次の山小屋に到着してしまった時や、チェックインしてからも食事まで時間が空いていることが多かったです。シャワーを浴びたり、ストレッチしたり、お昼寝したりしてもまだ時間が余ってしまう時もありました。
こういう時にじっくり本を読んだり、日記をつけたりするのがおすすめです。自然の中で雑音がなく、集中してのめり込むことができます。私も長めの本を予めダウンロードしておいて、時間がある時に読むようにしました。
また、歩きながら音楽を聴いたりするのが好きな人は、事前にダウンロードしておくと良いと思います。
ハイカーとの交流
初めは知らない人だらけでも、3日目あたりになってくるとだんだんどのグループが同じ日程で歩いているか把握できてきます。
また、宿では私のように一人で旅をしている人にもたくさん出会い、昨日はどこに行った、どこに泊まった、これからどこに行く、などの情報を交換し合うことができ、この交流も楽しい時間の一つです。
皆が皆、同じ場所をスタートし、同じ方向に10日間のペースで進むというわけでもなく、7日で完歩するという人もいれば、逆回りに進んでいるという人もいます。
また、私のように代理店が調整した日程通りに進み、宿の手配をしてくれることもあれば、それぞれ個人で計画・手配したという人もいるので、それぞれの体験が違っていて情報交換はとても貴重です。
こうした交流から、他にもバリエーションルートがあることや、近くで絶景スポットがあることなどを知ることができたので、ここで情報を得たのはとても貴重でした。
また国籍も豊かなので、それぞれ違ったバックグラウンドやこのツアーのモチベーションなども違ってくるので、そうした話を聞けるのもとても楽しく、良い経験になりました。
例えば、初めてソロ登山に挑戦したというオランダ人の子と一緒に歩いたり、カナダ在住の70代山好き夫婦からこれまでに行った世界中の山の話を聞いたり、山登りがきっかけで知り合ってから毎年ハイキングツアーを計画しているという多国籍グループと一緒にビールを飲んだり、国に帰ったら兵役に就かなければいけないというイスラエル人グループとゲームをしたり…普段なかなか知り合う機会のない人たちと交流することができ、忘れられない大切な思い出となりました。
まとめ
TMBは登山初心者でも挑戦できるハイキングコースといえますが、事前にしっかりと情報を集めた上で、万全な準備とトレーニングをすることが大切です。
また、代理店などを利用することによって、初めての人でも参加のハードルが下がるのでおすすめできます。
アルプスの絶景を楽しみつつ、世界中の人と交流できる素敵な機会を提供してくれるTMBを、ぜひ次の登山計画に加えてみてはいかがでしょうか。